[はじめに]より
日本は、2005年に高齢化率が世界第1位となってから、高齢化社会における取り組みについて世界が注目しています。そして2060年まで日本の高齢化率は世界第1位であることが推計されています。これは、問題でしょうか?悲しいことでしょうか?
わたしたちは、太古から長寿を目指していました。その結果、長寿とともに高齢期の時間を以前より長く手に入れ、長寿とともに「認知症とともに生きること」というgiftを与えられているともいえます。このような現代において、本書では、認知症とともに生きるご本人の家族の支援について解説しました。
第1章は、認知症とともに生きる人と家族を取り巻く社会の現状を、データをもとに読み解いています。
第2章は、認知症とともに生きる人と家族が体験していることについて、筆者が世界の論文をメタ統合した結果を整理しました。
第3章は、「家族」を知るために必要な知識や考え方についてまとめました。
第4章は認知症とともに生きる人と家族が獲得すべきソーシャルサポートという切り口から支援を考えました。
第5章は、認知症とともに生きる人と家族を実際に支援する立場から、解決が困難だった事例を振り返り、行った支援と課題として考えられることをまとめました。
本書は、認知症の方と家族を支える保健・医療・福祉専門職、とりわけコミュニティで看護活動を行う皆様が活用できるものになると考えています。
本書により、認知症の方と家族へのケアの質を高め、認知症の人および介護者における社会的幸福度や生活の質(QOL)を向上するための地域包括ケアや共生社会の社会システムの構築の一助となることを願っています。