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本書は一般病院で働く看護職の方々に読んでいただきたいとの思いで企画しました。
現在、一般病院の看護師には、発展し続ける医療機器や治療技術において、ミスのない判断・技術が求められてきています。入院日数短縮の動きの加速による病院・病棟・病床の統合・再編の中でより効率的な看護も求められています。その上に、認知症高齢者に対し適切に対応する力が求められており、大変なことと思います。
筆者らが担当する高齢者看護学実習では、急性期の病院等で患者を受けもち、看護過程を展開しています。そして、受けもつ患者は、できるだけ「80才以上で、認知症のある高齢者」を受けもちたいと実習病院に依頼しています。現在、約80%の学生が、認知症がある患者を受けもち、実習を行っています。われわれがなぜ、そのような実習を計画したか、それは、ますます社会の高齢化が進むのに伴い、一般病院に入院する認知症の人の数は増加するため、基礎教育の高齢者看護学として避けてはならないと考えたからです。
しかしながら、学生にとっては身体疾患を有する高齢者の看護の展開だけでも難しく、その上に、認知症の問題を組み合わせて考えることはさらに難しいことです。どのようにすれば認知症を悪化させずに身体疾患の回復を促し、適切な時期に退院できるように支援するか、それは学生の課題ですが、実は教員が学生とともに考えてゆく課題でありました。本書では、その課題に取り組む中で得た認知症高齢者の看護の手がかりを含めて示したいと思います。
本書では、執筆者全員が自身が行った調査や実践をもとに執筆しています。
第1章では一般病院で認知症の患者に起こっている身近な倫理的な問題をトピックス的に取り上げ、掘り下げています。
第2章では入院プロセスや回復目標が異なる3つの疾患を取り上げ、看護の実際を紹介し、それを受けて第3章で身体疾患で入院する認知症の人の看護の基本を述べています。そして、最後に一般病院に入院する認知症高齢者の人に関する社会的動向を概観しました。
認知症の研修で、認知症看護の理念やコミュニケーション方法を学習しても、忙しい毎日の臨床でそれどう生かしていけばよいのかと悩んでいる臨床の看護師が、「これならやってみることができる」「明日、これをヒントにやってみよう、考えてみよう」と思っていただけることが、執筆者全員の願いです。
(「はじめに」より)