若年性認知症の人の実態と支援体制<前半>

2018年、若年性アルツハイマー病を発症する主人公のテレビドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』が話題になりました。

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今回は、あまり知られていない若年性認知症の実態を明らかにした上で、若年性認知症の人とその家族が抱えている問題や現在の社会的な支援体制について認知症介護研究・研修大府センター研究部長・医学博士の小長谷 陽子(こながや ようこ)さんに解説していただきます。

若年性認知症とは

●若年性認知症の定義

認知症は、一般的には高齢者に多い病気です。65歳未満で発症した場合は、「若年性認知症」と呼びます。医学的には大きな違いはありませんが、認知症高齢者と区別するのは、若年性認知症の人の多くは働き盛りの世代であり、病気になると本人だけでなく家族にも社会的な影響が大きいからです。

まず、認知症になったために失職する人が多く、経済的に困難な状況に陥ります。また、親の病気が子どもに与える心理的影響は大きく、教育・就職・結婚など、子どもの人生設計が大きく変わる場合もあります。若年性認知症の人の介護は配偶者に限られることが多いので、本人や配偶者の親の介護が重なるとさらに介護負担が大きくなります。よって配偶者も仕事を十分にできなくなり、本人だけでなくその家族も身体的に精神的に、経済的にも大きな負担を強いられることになってしまうのです。

●若年性認知症の実態1, 2, 3)

厚生労働省の研究班によると、全国の若年性認知症者数は約3万7800人(2009年時点)で、人口10万人当たりでは47.6人となっています。認知症高齢者数は約460万人(2012年時点)とされているので、それに比べれば少なく、人口10万人当たり男性は57.8人、女性は36.7人と男性に多いのが特徴です。発症年齢は平均で51.3歳であり、約3割は50歳未満で発症しています。

原因疾患は、脳卒中(脳梗塞や脳出血)が原因である脳血管性認知症が最も多く(約40%)、アルツハイマー病は約25%とされています。その他、頭部外傷後遺症やアルコール性認知症など多様であることも特徴です。なお男性では、脳血管性認知症、アルツハイマー病、頭部外傷後遺症の順で多く、女性では、アルツハイマー病、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症の順になっています。アルツハイマー病は年齢にかかわらず女性に多いので、このような男女差が出ると考えられています。

認知症の重症度は、軽度(職業や社会生活には支障があるが日常生活はほぼ自立)、中等度(自立生活は困難で見守りあるいは介助が必要)、重度(日常生活動作全体にわたり介助が必要)の3段階に分けると、それぞれ3分の1程度になります。若年性認知症は軽度の人が多いと考えがちですが、実際にはそうではありません。

2014年度に全国15府県を対象に行われた調査では、基本的な日常生活動作(歩行・食事・排泄・入浴・着脱衣)について、排泄・入浴・着脱衣では自立している人が半数以下で、全介助を必要とする人が約3割となっており、介護者の負担が大きいことがわかりました()。若年性認知症は必ずしも軽度ではなく、むしろ介助を要する人が多いのです。

図|若年性認知症者の日常生活動作の程度

高齢者の認知症との違い

若年性認知症は、医学的には老年期の認知症と同じですが、次のような特徴があります4) ・発症年齢が若い  ・男性に多い  ・「何かおかしい」ことには気がつくが、認知症と思わず受診が遅れる  ・BPSD(認知症の行動・心理症状)が目立つと考えられている  ・経済的な問題が大きい  ・主介護者が配偶者である場合が多い  ・親などの介護と時期が重なることがある  ・子どもの教育・結婚など家族に及ぶ影響が大きい  

●発症年齢と気づき

発症年齢が若いことは前述した定義のとおりです。男性に多いことも高齢者とは異なる特徴であり、そのために就労に関することをはじめ、さまざまな課題が出てきます。

最初に気がつく症状としてはもの忘れが多く、行動や性格の変化、言語障害などもみられます。判断力や実行機能が低下するので、仕事の手順や段取りが悪くなります。イライラしたり、怒りっぽくなったり、気分が落ち込むこともあるため、うつ状態と考えられてしまうことも多々あります。

もの忘れによる仕事のミスや家事が下手になることで、本人や家族は「何かおかしい」ことには気づきますが、認知症であるとは思わず、受診が遅れることがあります。

●BPSD

認知症の人への介護では、中核症状だけでなく、認知症の行動・心理症状、いわゆるBPSDの有無や内容、程度が大きく影響します5)

若年性認知症ではBPSDが多い、あるいは強く現れやすいといわれますが、BPSDの出現頻度は認知症高齢者と同じくらいで、約3分の2です。内容的には少し違いがあり、高齢者では「無関心」や「うつ状態」が多いのに比べ、若年性認知症では「興奮」が最も多く、体力があることから見かけ上、強く出るように感じられます。さらに「攻撃」や「妄想」もよくみられ、これらの陽性症状は、無関心やうつ状態などの陰性症状に比べて、介護者の負担増の大きな原因になるだけでなく、施設入所や入院のきっかけになると考えられます。

●家庭内の問題

若年性認知症の人は、すでに退職した年代で発症する高齢者とは異なり、多くは働き盛りの世代であるため経済的な問題が大きくなります。本人や家族の生活はもちろん、子どもの教育にもお金が必要なときであり、さらに医療費や介護にかかる費用も少なくありません。

若年性認知症の人の場合は、主介護者が配偶者に集中します。また本人や配偶者の親の介護とタイミングが重なると、時に複数人介護の状況になることもあります。となると、本人だけでなく、介護者となる配偶者も介護のために仕事を減らしたり、場合によっては退職を余儀なくされます。そのため、ますます経済的に困難な状況となり、介護の疲れ、病気や将来への不安など、本人も介護者も大きな負担を強いられることになるといえます。

<引用・参考文献>

1)朝田隆:厚生労働科学研究費補助金長寿科学総合研究事業「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」平成18年度~平成20年度総括研究報告書, p.1-21, 2009.

2)厚生労働省:認知症施策の現状について, 2014.

3)認知症介護研究・研修大府センター:平成26年度老人保健健康増進等事業による研究報告書「平成26年度認知症介護研究報告書 若年性認知症者の生活実態及び効果的な支援方法に関する調査研究事業」, 2014.

4)小長谷陽子, 渡邉智之, 小長谷正明:若年認知症の発症年齢,原因疾患および有病率の検討 愛知県における調査から, 臨床神経学, 49(6), p.335-341, 2009.

5)小長谷陽子, 渡邉智之, 小長谷正明:若年認知症の行動と心理症状(BPSD)の検討ー愛知県における調査から, 神経内科, 71(3), p.313-319, 2009.

──月刊「コミュニティケア」第18巻 第03号 p.54-56より転載

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