若年性認知症の人の実態と支援体制<後半>

 
 

2018年、若年性アルツハイマー病を発症する主人公のテレビドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』が話題になりました。

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今回は、あまり知られていない若年性認知症の実態を明らかにした上で、若年性認知症の人とその家族が抱えている問題や現在の社会的な支援体制について認知症介護研究・研修大府センター研究部長・医学博士の小長谷 陽子(こながや ようこ)さんに解説していただきます。<前半はこちら>

これまでの若年性認知症支援施策

2008年7月の「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」において、若年性認知症対策が取り上げられました。これを受けて、2009年度には「若年性認知症施策総合推進事業」が創設され、都道府県ごとに、若年性認知症自立支援ネットワーク構築事業、若年性認知症自立支援ネットワーク研修事業、若年性認知症実態調査及び意見交換会等の開催によるニーズの把握、若年性認知症ケア・モデル事業を行うこととなりました。また「若年性認知症コールセンター運営事業」の実施も明記され、2009年に認知症介護研究・研修大府センターには日本唯一の若年性認知症相談窓口として若年性認知症専用コールセンターが開設されました。さらに、若年性認知症施策を推進するための意見交換会も2010年度以降は認知症介護研究・研修大府センターが担当し開催しています。

2012年9月には「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」が出され、若年性認知症対策の強化として、2012年度に『若年性認知症ハンドブック』(本人・家族向け)、2013年度に『若年性認知症支援ガイドブック』(相談対応者向け)が作成されました。

2015年1月には新しく「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が出され、若年性認知症対策の強化として、都道府県の相談窓口に支援関係者のネットワークの調整役を配置することとなりました()。

表|これまでの若年性認知症支援施策(2016年1月時点)
若年性認知症の人への経済的な支援体制

若年性認知症の人に対する支援は、就労中、退職後などのそれぞれの段階によって違ってきます。利用できる制度としては、自立支援医療制度(精神通院医療)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神障害者保健福祉手帳)、身体障害者福祉法(身体障害者手帳)、障害年金(精神障害)、障害者自立支援法、介護保険制度などがあります。

認知症は精神疾患であり、都道府県の指定を受けた医療機関に通院する場合、医療費の自己負担軽減のための自立支援医療制度(精神科通院医療)を申請できます。また、脳血管性認知症により身体的障害があれば、身体障害者手帳も申請することができます。

また、病気などにより仕事を続けることができなくなった人や家族の生活を支えるための制度として障害年金があります。ただし、本人が初診時に加入している公的年金によって障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金に区分され、受給できる年金が異なります(2015年の法改正により、共済年金は厚生年金に統一された)。

●雇用継続のための支援

企業での早期発見・早期対応には、産業医や産業保健師が重要な役割を果たします。産業医等は対象者の作業能力を見極め、仕事の内容を見直したり、配置転換をしてできるだけ雇用が継続できるようにします。しかし、経済的な理由でなんとか仕事を継続していたものの最終的には退職となったある若年性認知症の人は「何をしていいのかわからず、まわりに迷惑をかけていると思うといたたまれなかったが、妻や子どものことを考えて我慢していた。会社を辞めてほっとした」と話していました。このように、必ずしも仕事を続けたい人ばかりではないので、本人の意向や家庭の事情をよく理解することが必要です。3日以上休職することになれば、傷病手当金が支給される場合もあります。

●退職後の支援

失業した場合は、ハローワークに求職の申し込みを行い、求職活動をして失業の認定を受ければ失業給付を受けることができます。しかし、求職活動には就労意欲と作業能力が求められ、現在の社会状態ではなかなか困難な状況です。障害者の授産施設で働く方法もあります。

●介護保険制度の利用
認知症の場合、65歳未満でも40歳以上であれば介護保険の申請ができます。愛知県での調査6)では、約80%が要介護認定を受けていました。利用しているサービスはデイサービスとデイケアが最も多く、次いでショートステイでした。

しかし、高齢者と共通のサービスを提供する事業所が多く、若年性認知症の人からは戸惑う、馴染みにくいといった声があります。実施されるプログラムの内容もほとんどが若年向きではありません。受け入れる介護職も、若年性認知症の対応に慣れておらず、苦慮していることが多いようです。若年性認知症の人に適したサービスやプログラム、対応方法の指針が求められています。

地域で働く看護職へ

前述したように、若年性認知症の人は必ずしも軽症ではなく、むしろ多くが介助を要する人です。また、高齢者と同様に認知症以外の疾患を持っている人も少なくありません。症状の進行や服薬など医学的な助言を求めている人も多いはずです。家族の不安の第一は「認知症の進行」というデータもあります。

医療職として、地域で働く看護職の方々には、認知症の進行抑制や合併症の予防・コントロールなど、専門的知識を生かして地域で暮らす若年性認知症者やその家族の不安を取り除いていただけたらと考えます。新オレンジプランにも取り上げられ、最近急増している「認知症カフェ」などにも積極的に参加して、本人や家族の声に耳を傾けていただければ幸いです。

 

<おわり>

<引用・参考文献>

6)小長谷陽子, 渡邉智之:愛知県における若年認知症の就業,日常生活動作および介護保険利用状況, 厚生の指標, 57(5), p.29-35, 2010.

7)小長谷陽子編著:本人・家族のための若年性認知症サポートブック, 中央法規出版, 2010.

──月刊「コミュニティケア」第18巻 第03号 p.56-57より転載

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