レビー小体型認知症の症状を以下に示します。特に幻視とパーキンソン症状は、ほかの認知症の初期には見られないため、鑑別に有用です。
●幻視
レビー小体型認知症では、発症初期から「知らない人がいる」「壁に虫が這っている」「子どもが枕元に座っている」といった、実際にはないものが生々しく見える幻視がしばしば出現します。これはレビー小体型認知症に特徴的な症状で、特に夜間に表れます。
●パーキンソン症状
パーキンソン病に似た運動障害で、体が固くなり動きづらい、手が震える、急に止まれないといった症状が出現します。そのため、レビー小体型認知症の人は転倒のリスクが高く、寝たきりになることもあります。
また、自律神経障害もみられ、便秘や尿失禁、起立性低血圧などが表れます。
●認知機能の変動
アルツハイマー型認知症は徐々に症状が進行していきますが、レビー小体型認知症は時間帯や日によって認知機能に変動があり、調子のよいときと悪いときとを繰り返しながら進行していきます。
物事を理解・判断できるときがある一方で、ぼーっとして極端に理解力・判断力が低下しているときがあります。
しかし、家族や介護者は本当はできるのにしないのではないかと誤解し、怒ったり無理強いしたりしてしまうことがあるので、注意が必要です。
●レム睡眠行動障害
「眠れない」などと訴えるものの実際には寝ており、その最中に暴れたり大声を出したりします。これは、レム睡眠行動障害と呼ばれるもので、レビー小体型認知症にはかなりの頻度でみられ、診断を示唆する症状の1つです。
健康な人は、レム睡眠中に骨格筋が弛緩されるので、夢の中の行動をそのままとることはありませんが、レム睡眠行動障害のある人は筋弛緩がみられないため、睡眠中に夢のままに行動することがあります。まるで現実のような生々しい夢を見て、寝言を言う・大声で叫ぶ・寝具をまさぐるなど夢幻様行動や、ベッドから飛び出す・暴力を振るうなどの異常行動を起こします。本人には睡眠中に起こったエピソードの記憶はありません。
レム睡眠行動障害の確定診断は、脳波・眼球運動・筋電図などを記録するポリソムノグラフィ検査によって行われます。
●抗精神病薬の感受性の亢進
抗精神病薬の感受性の亢進も、看護職が理解しておきたいレビー小体型認知症の重要な特徴です。
レビー小体型認知症になると、抗精神病薬を少量服用しただけでもパーキンソン症状の急激な出現・増悪、嚥下障害、過鎮静、意識障害、悪性症候群などを起こすことがあります。したがって、処方が変更された際は、これらの症状の出現に注意しましょう。