●診断を受けたときの妻の思い
妻にアルツハイマー病の診断を受けたときの気持ちを尋ねても、なかなか返事は返ってきません。「D病院で医師に『もう授業をするのは難しいですよ』と言われたとき、涙を流しておられました」と、教頭先生から後で聞きました。
また、診断前の数年間、私と妻はよくけんかをし、家事がうまくできない妻に対して、「ちゃんとやらないなら叩き出すぞ」というようなきつい言葉を浴びせたことも何度かありました。診断後に、散らかった妻の部屋を一緒に片づけながら「病気だとわかっていればもっと優しくしたのに……。ごめんね」と声をかけると、妻の目からは涙が数滴こぼれ落ちました。
●妻の病気を知った後の私
私は2014年4月に、それまで数年間患っていたうつ病がほぼ寛解し、心療内科で最後の診察を受けました。その翌日に妻がアルツハイマー病であることを知りました。
その後、妻は迷子になったり、部屋を散らかすようになったため、私は多くのことに対応しなければならなくなりました。そうこうしているうちに、暑くもないのに胸に汗をかいたり、だんだん私の体もおかしくなっていきました。
当時の私は妻や子どもたちの将来に対する不安と絶望に支配され、うつ病が再発していました。以前通っていた心療内科に再び通院し、抗うつ剤、睡眠導入剤、抗不安薬(頓服)を処方してもらいました。抗うつ剤の作用が安定するまでの間は、何もかもを投げ出して1人この世から消え失せたい気持ちが何度もわいてきました。仕事に行く前や、妻の職場に呼び出されたりするときは、事前に抗不安薬の服用が欠かせませんでした。毎日、片道1時間かけて、自分で車を運転できなくなった妻をC高校に車で送迎する中で、私は薬の副作用による眠気に頻繁に襲われ、何度か追突事故を起こしそうにもなりました。
2014年6月からはC高校で月1回、情報交換を行うようになりました。そこでは、妻がこんな失敗をした、あんなミスをしたとの報告を受けた上、「旦那さんはいつか決断をするときがきますね」とまで言われました。私には本当につらい日々だったのです。
<つづく>