認知症をもつ人とその家族の生活を支え
地域・社会をよりよくしていきたいと考えている
医療・看護・介護専門職のためのサイト
小澤勲先生が選ぶ“認知症を知るための本”―⑪介護をこえて~高齢者の暮らしを支えるために

& Media

小澤勲先生が選ぶ“認知症を知るための本”―⑪介護をこえて~高齢者の暮らしを支えるために

痴呆を生きるということ』『認知症とは何か』等の著書で有名な精神科医・小澤 勲 先生が選んだ“ぼけ”をテーマにした文学作品・詩歌・絵本を、毎月1冊ご紹介します。

 

~ ・ ~ ・ ~ ・ ~

介護をこえて

高齢者の暮らしを支えるために

 

浜田きよ子

NHKブックス / 2004年 / 品切

 

京都・西陣の一角に「高齢生活研究所」という場所があり、それと合体するように「むつき庵」が置かれています。主宰者は浜田きよ子さんです。彼女は素晴らしい実践を重ねておられ、私が尊敬する一人です。

 

「むつき庵」に行くと、さまざまなベッド、ポータブルトイレ、入浴介助具、シルバーカー、助聴具などのシニア・グッズが所狭しと並べられていますが、圧巻なのはおむつで、数百種類のおむつが置かれています。

 

これらをご家族や施設のスタッフと相談して、その人その人の不自由に応じて試用してもらい、うまくいったと喜ばれたものを業者から取り寄せて購入していただく。こうすると、「俺はずっとこのままか」と嘆き、落ち込んでいた方も、生き生きと暮らしていただけるようになり、表情まで変わってきます。そのような例をいくつも教えていただきました。

 

おむつに例をとると、「漏れないように」という介護側の都合をひとまず括弧に入れ、本人にとってどのような排泄介護が必要で快適か、を考える。そうすると、おむつでぐるぐる巻きにされて、身動きさえできなかった方のおむつがとれたこともある、と言われます。

 

「たかが排泄」と侮るなかれ、このような地道な工夫がどれだけ大切かは、私の経験からも納得できます。身体介護の成功が生きる希望もつくるのです。「心のケアも必要だが、身体的ケアをもう一度見直すべきだ」「身体介護がもっともよい心のケアの場にならねばならない」と私は考えています。

 

私も一時、抗がん剤の副作用で下痢が強くなり、浜田さんに相談しましたら、たくさんの種類の失禁パッドを「お土産」にいただきました。お支払いしようとしたら、「これは試供品ですから、どうぞお持ち帰りください」と言われました。

浜田さんのこれまでの実践をまとめられたのが、この本です。具体的な例もたくさん書かれていて、暮らしに役立つ本だと思います。

── back number ────────────

はじめに

①明日の記憶荻原 浩  著

②われもこう瀬戸内寂聴 著

寂蓼郊野吉目木晴彦 著

④ただ一撃藤沢周平 著

⑤都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト澁澤龍彦 著

⑥わが母の記―その1「花の下」井上 靖 著

⑦わが母の記―その2「月の光井上 靖 著

⑧わが母の記―その3「雪の面井上 靖 著

おばあちゃん ひとり せんそうごっこ谷川俊太郎 文、三輪滋 絵

わたし 大好きリディア・バーディック 作、みらいなな 訳

──────────────────

2020年07月27日